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近隣のU社を巻き込んだ「共同開発」

【TCA情報局ブログ】

私の履歴書 vol.017
近隣のU社を巻き込んだ「共同開発」

2016年08月09日

士野コーチング事務所 代表

しの かえで

士野 楓

長くて、暑い夜が続いていた。

単独建て替えをするよりは、角地で立地条件が良い物件を持つU社と一緒に建て替えたほうが、将来的には良いとの判断はできたが、まだまだ越えなければならない問題は山積していた。

まず、共同開発による工期の延長を住民が納得するのだろうか?
そもそもU社が同意するのだろうか? 
仮に、U社が同意したとしても、法人ゆえに結論が出るのに時間がかかるのではないだろうか?
結局、理事長のU氏は中央区と連携を取りU社を担当、私は36世帯の住民の説得と、手分けして動くことにした。

私は、一人ひとりと会い、何度も繰り返し建て替え後のビジョンを語り、そして質問した。
「単独建て替えと共同開発での建て替えとでは、どんな違いがあると思いますか?」
「前のマンションに満足していますか?」
「前のマンションはどんなところが良かったですか?」
「満足していなかったところは、どんなところですか?」
「一から建てるのに、ここだけはもっと良くしたいと思うところはありますか?」
「子供達にどんな"住まい"を残したいですか?」

今思い起こしてみると、これらはまさしくコーチングの質問であった。
話を聞き出す私も当事者の一人なので、私にも明確な答えがあった。

勇気を振り絞って、最後に一番大事なことを聴いた。
「どんなマンションになればいいですか?」
「残念ながら、私達は2,200万以上の追加負担金を払わないと戻ることはできません。その追加負担をどのように役立ててほしいと思いますか?」

これに対して、こんな逆質問も受けた。
「士野さんは、どう思いますか?」

私はこんな回答をした。
「私個人としては、これから2,200万以上の追加負担金を払って、前と同じような日当たりの悪い、暗くて寒い家に戻るのは嫌です。無理をしてやっとの思いでローンを組んで新居を構えたのに、この先、住んでもない家にローンを払い続け、さらに仮住まいの家賃まで支払って、その上さらに2,200万以上の追加負担金を払わなければならないのが現状であれば、前より少しでも良い環境に移りたいと思います。」

(いつ頃建て替えを終え、皆で帰ることができるようになると思いますか?)
と聞きたかったが、言葉を飲み込んだ。
誰もその答えを出すことは困難であると判断したからだ。

結局、住民一人ひとりと話をしたので、それぞれの考え方の相違や、家に対する事情や価値観などを理解することができた。
人の話をとことん聴く"筋肉"は、この経験を通じて付いたのかもしれない。

2006年7月29日、共同開発を行うことに対して、住民の同意を得ることができた。 これで、「地権者全員の決議を持って来い」と言っていたU社に、中央区が本気で話し合いを始める準備が整ったのだった。

一方、私自身の商売はというと、依然として低迷が続いていた。
飲食店経営以外のコンサルティングや翻訳、ビジネス通訳の仕事などは、あの事件以来、バッサリと跡形もなく消えていた。
銀座で直営している2店舗はかろうじて回転してはいたが、給与の時期と協力業者との打合せ以外に、私は全く顔を出すことができなかった。"看板娘"なのに・・・。

(このままでは事業は破たんする。何とかしないと・・・。マンションなんか放っておいて自分の事業に専念すべきなのではないか?では、マンションの再建は誰ができるのかな・・・。○○さん?△△さん?でも、皆さん会社勤めだし・・・。私と同じように、今までの流れを把握し、住民や関係者の信頼関係を構築できて、なおかつ、このプロジェクトに時間を割ける人は一体誰・・・?)

答えが出ないまま、無情にも時間ばかりが過ぎて行った。

久しぶりに店に居たら、長年お付き合いのある「ぐるなび」のEさんがいらっしゃった。
彼は私のことを、敬意を込めて「社長」と呼んでくれていた。 「社長、ご無沙汰しております。このたびは大変でしたね・・・。」
「ありがとう。でもこれからです。本当に大変なのは。」
「実は、お店のことで相談があるのですが・・・。」
「え、お店?なにかご迷惑をおかけしましたか?」
「いいえ、突然のお話で恐縮ですが、このお店を手放すお考えはあり得ますか?というご相談です。」

正直、言葉を失った。

「実は、銀座を中心にフードサービスチェーン店を展開している会社がありまして、そこの代表からの話です。今後展開していく上でお店を探しているのですが、ちょうど社長の経営しているお店の立地条件がいい、というお話がありました。規模的にも申し分ないとおっしゃっています。」

「手放すことなんて、一度も考えたことはない」と言えば嘘だが、このタイミングで手放すことなど、まだ考えていなかった。

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