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日本の谷口マスターコーチ

【編集部より】

【座談会】韓国の朴プロコーチと
日本の谷口マスターコーチ

2015年06月01日
TCA情報局編集部

『ザ・コーチ』韓国版の出版にあたり、同著の第2翻訳者でICF国際コーチ連盟韓国支部の副理事である朴コーチが来日、原著者の谷口貴彦コーチと第1翻訳者である士野楓コーチを交え、日・韓のコーチング業界の現状と展望についての座談会が行われた。
参加者:谷口 貴彦/朴 哲秀/士野 楓/五十嵐 久/大坪 タカ/大石 典史/谷口 恭子/大橋 努/眞田 法子

朴コーチ

初めまして。朴です。どんな方がこんなに素晴らしい本を書かれたのか、是非お会いしたくて参りました。

谷口コーチ

ようこそ日本へ。遠いところをご苦労さまでした。会ってみていかがですか?(笑)

朴コーチ

「威厳」と言いましょうか。とても谷口コーチの「プレゼンス」を感じます。

谷口コーチ

ありがとうございます。そう言っていただき恐縮です。ところで朴さん、現在の韓国におけるコーチングの認識はいかがですか?

朴コーチ

韓国は、日本より「5年くらい遅れている」と感じています。私見ではありますが、メンタルに投資をするということは、GNP(国民総生産)にも関係していると思います。
コーチングの世界を開く最初のボタンは2万ドル(日本円で240万円)だと推測しています。コンサル市場は、1万ドル(日本円で120万円)です。コンサルティングの市場にしても、コーチングの市場にしても、解決することにチャージはしません。
クライアントは、答えを望んでいるのではないと思います。コーチがクライアントに強い質問をする時に、クライアントはお金を支払います。いわば「社会変動論」ですね。
私達コーチは、常にGNPを意識しつつ、社会変動に敏感になる必要がありますね。

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谷口氏・朴氏・大石氏

谷口コーチ

私がコーチングを始めた12年前の日本でも同じでしたよ。
つい最近まで、日本も答えをくれる人にお金を支払っていました。しかし、「答えをもらっても解決できない」ということを彼ら(企業)は学んだのです。
日本人とか、韓国人とか、インド人とか、そういう差ではなく、ただ単に所得の差ですね。コーチは「変化を創り出す人」であり、「人が自ら変化を起こすようにサポートする人」です。「恐れ」「障害」「ブレーキ」などを本人が打ち破るお手伝いをするのです。
韓国は、今、殻を破ろうとしています。どんな時代でも、そのような状態に直面するのかもしれません。韓国の若い人達にはエネルギーが溜まっていますね。
日本は、ここまで来るのに10年かかりましたが、後を追いかけるのに時間は半分でOKだと思います。ですから、韓国は、日本以上に急成長するでしょうね。

朴コーチ

韓国は、コーチングのマーケットニーズが高まっています。大企業を中心に広がっていますが、まだまだこれからです。ちなみに、韓国では、『嫌われる勇気』が現在35万部の大ヒットとなっています。

谷口コーチ

どんな理由で、韓国では『嫌われる勇気』がヒットしているのですか?

朴コーチ

韓国は"競争意識"が強くて、皆が「上に立たなきゃいけない」と常に感じている。それは、ある意味ではしんどいものです。
5年前、アドラー研究所の方が初めて韓国に来られました。そして、韓国でもアドラーのプログラムが出回り始めました。各分野の学者達は自らの分野を掌握していましたが、最近はそれが開放されてきたように感じます。アドラーに関して私の解釈(分析)は、「皆が仲間と共に生きていく」という"仲間意識"だと思っています。4~5年、もしくは、7~8年かかるかもしれませんが、これからはパーソナルコーチングの時代だと思います。
韓国では、パーソナルコーチングの割合は低いです。まだまだ自分に投資できないのです。

谷口コーチ

ここ2~3年の日本の流れもそうかもしれません。昔、日本は、会社に所属して、ある意味我慢をしていましたが、今は、会社を上手く使おうとしている人達が増えました。
ところで、韓国では、どんな場所でコーチングを習うのでしょうか?

朴コーチ

学ぶ場所は10校ほどあります。ハンカシップセンター・ICF・CTIの3つが、韓国での3大コーチングスクールです。
ICFとCTIは、韓国リーダーシップ協会が受け皿です。IAC(インターナショナルアソシエイトコーチング)は、アジアコーチングセンターとコーチングリーダーシップセンターが受け皿です。
韓国では、「コーチをやりたい」というニーズはたくさんあります。現在、韓国でのコーチング業界は会員が約3000人です。これは、会費を払っている人数ですが。日本ではどうですか?

五十嵐コーチ

日本は約2万人いますね。

朴コーチ

韓国は、人口やコーチングを始めた時期が日本と違いますので、厳密には言えませんが...。
韓国のコーチングには2つの柱があります。先ほど挙げた3000人の中には、「認定講師」だけでなく「カウンセラー」の方も会員に含まれています。
現在の韓国では、アメリカでカウンセラーの勉強をしてきたら、すぐにコーチになれますよ。

五十嵐コーチ

日本では、「産業カウンセラー」という、コーチングとは別の団体があります。韓国では、別の団体は無いのでしょうか?カウンセラー業界とコーチング業界が一緒になっているのでしょうか?

朴コーチ

はい。現段階では、ひとつになっていて、この団体がとても大きいのです。
カウンセラーは、主に精神疾患がある方を対象に治療を行いますよね。コーチングは、とてもポジティブな面にスポットを当てるので、カウンセラーからコーチに転換する人が多いのです。アメリカでは、「50%の人がカウンセラーからコーチに転向した」というデータがあります。

谷口コーチ

朴さんは、いつ頃コーチングに出会われたのですか?

朴コーチ

元々、HRD(人材開発)の仕事をしていました。ちょうど、今から13年前にコーチングに出会いました。PCC(ICFの資格の一つ)の要件のひとつに「750時間のセッション経験」というものがありますが、225時間のプログラムの紹介をインターネットで見たのがきっかけでした。
2ヶ月間、コーチングを学んだ後に、当時、小学5年生の次男にコーチングを初めて行いました。初めてコーチングを行った翌朝、次男がなんと靴を磨いていたのです。韓国では、靴磨きをしてくれる人は他にたくさんいます。しかし、初めて次男が靴を磨いている光景を見たのです。たった30分間のコーチンングで、人はここまで変わるのかと驚きました。 私は、その光景を見て外出する際、エレベーターに乗りながら、あらためてコーチングの素晴らしさに感動しました。きっとこれは、ビジネスになるなぁとも思いました。
その後、長男にもコーチングを行いました。大学卒業後、長男はメルボルンに留学していたのですが、6ヶ月間、電話で定期的に1時間のコーチングを行いました。そして6ヶ月後に、3つのことが変わりました。
1つ目は、自分に対する呼び名が、「お父さん」から「父上」に変わりました。
2つ目は、丁寧語を話すようになりました。
3つ目は、「お父さんのことを尊敬する」と言うようになりました。
だから、私は、コーチングを愛しています。私の息子達は、私のことをコーチだと思っています。

五十嵐コーチ

「身内にコーチングをすることは難しい」と言われていますが、何か秘訣はありますか?

朴コーチ

実際の親子関係において、子供にコーチングをすることはとても難しいと思います。自分は運良く成功しました。要因は、コーチスキルですかね。
暴露してしまうと、妻にはダメでした(笑)。夫婦関係だと、妻が挙げる問題は自分にあったりするので、上手くいきませんでした(笑)。

五十嵐コーチ

日本でも同じですね(笑)。

朴コーチ

なぜ、自分の息子でコーチングが成功したのかを考えると、彼らのコーチングをした際に、感情を横に置いておいたからでしょうか。自分の息子に期待をかけてしまったら、コーチングが上手くできない原因を作っていたことでしょう。
韓国では、父親は「無関心であることが大事」とされています。息子とのコーチングの際に、私はコーチとして存在するので、自分で判断するのではなく、コーチングの影響力を与えることを心掛けました。韓国の家庭では、子供に「あれやれ、これやれ」と言う場面がありますが、これは子供達の判断する機会を失っているのです。

五十嵐コーチ

韓国では、コーチングを学ぶ女性は多いのでしょうか?

朴コーチ

3000人中60~70%位は女性です。日本ではいかがですか?

五十嵐コーチ・大坪コーチ

日本では、半々ですかね。

朴コーチ

これは私の推測ですが、韓国では、おそらく60~70%の女性の中には、職業を持っていない主婦の方が多いと思います。コーチングを学んでも、お金を稼ぐことが大変です。3000人の中で、プロコーチとしてやっている人は少ないと思います。
主婦は職業経験が薄いので、コーチングを学んで実際にビジネスとしてやっていくのには、少々ハードルが高いと思います。男性は、定年退職した後にコーチングを学んで、ボランティアもしくはプロとしてやっていく人がいます。
コーチングの初期メンバー(第一世代・コーチングを韓国で最初に始めた人達)は、お金を稼ぐビジネスコーチをやっている人が多いですね。後の世代は、ビジネスコーチとして稼ぎたいとは思っていますが、なかなか上手くいっていない現状があります。
また、韓国のコーチ業界では、上層部に女性が多いのも特徴ですね。

大坪コーチ

「稼げるコーチ」と「稼げないコーチ」との違いは何だと思われますか?

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左から五十嵐氏・朴氏

朴コーチ

私は、韓国の上位5%の稼げるコーチに入っています。その理由の1つは、ビジネスコーチングを維持しているからです。コーチングを行う前から、企業にリーダーシップ研修や経営コンサルタントとして関わっていたのです。お客様は、コンサルタントとして仕事を依頼します。コンサルティング的なコーチということです。
アメリカでも、純粋なコーチではなく、コンサルタント・コーチが生まれました。「プロセスコンサルティング」です。
コーチ的なコンサルタントがいますが、彼らはこれまでのコンサルティングとは異なりプロセスを大切にします。一般的なコンサルティングで行われている「こうやれ、ああやれ」という進め方には、これまで問題が多かったのです。解決方法だけ教え、あとは関与をしないため、結果が出ないという問題です。本人達ができるまでケアをするというのが「プロセスコンサルティング」です。言い換えれば、「サンドイッチ的なコーチング」のようなものです。それは、「ティーチングやコンサルティングの最初と最後にコーチングを挟む」というものです。
コンサルティングと言っても、哲学は、コーチングと同じです。
1つ目は、本人に力(潜在能力)があると信じること。
2つ目は、本人が解決策・答えを持っている、または、元々知っていると信じること。
3つ目は、コーチが顧客の欲望に捉われず、真実を見えるようにすること。
この3つが大切です。
「プロセスコンサルティング」は、アメリカでも行われています。今までのコンサルティングは、コンサルタントが分析し、プランを立てるだけで終わっていました。しかし、「プロセスコンサルティング」により、クライアント自身が実行するまでフォローするようになっていったのです。

谷口コーチ

日本も同じであるように思います。企業は従来のコンサルティングだけにお金を出そうとは思わなくなっているように思います。その理由は、答えをもらっても、それを実行に移すことは難しいからです。

朴コーチ

私は、コーチングの概念の根底には仏教思想があると思います。
コーチングの概念を紐解くと、4つの大切な思想があります。
第1に『慈』。慈悲の心。優しさ。
第2に『悲』。苦悩、知恵。
第3に『喜』。喜び。
第4に『思』。平常心。
この4つの思想は仏教にあるものです。これがコーチングのコア(核)だと考えます。ニュートラルな心、平常心のフィールドにこの4つの思想があります。

谷口コーチ

その通りですね。私も日本の仏教の根底に、コーチングのスキルを感じます。

朴コーチ

韓国では、釈迦の教えを大切にしています。
コーチングとは、心を「釈迦」とし、その心をスキルとして伝えることが大切です。もどかしく感じることは、その瞬間に「釈迦ではない」ということです。
アメリカでは、これを「コーチングプレゼンス」と呼んでいます。いかに障害を取り除いて、最大限のパフォーマンスを発揮するかということが鍵になるかと思います。

谷口コーチ

今の朴さんのお話を聞いて感じたことですが、アメリカのコーチングは心理学に基づいて成り立っていますが、アジアのそれは、原理原則に基づいていますね。根っこの部分は同じで、コーチングは、それをいかに具体的に体現するかです。宗教は、いかにそれを概念化するかですね。
ICFが掲げているコンピタンシーの半分(A・Bの部分)はプレゼンスについて語っています。ここは、宗教でも言われている部分であり、概念的な部分がほとんどです。バランスを取るためにも、コンピタンシーは、より具体的な部分(C・D)も存在しているのですね。
先ほどの、朴さんの4つの概念は「心」ではあるけれども、「技術」について伝えることも大切ですね。人はやり方や方法を学ぶ時、スキルだけではなく概念も同じように修得していかなければならないのです。概念だけでもダメです。バランスが大事ですね。

朴コーチ

心を鍛えるためには、瞑想で頭を空っぽにします。その上で、コーチングスキルを使用します。また、皆に概念を広めるためには、常にスキルも磨かなければいけません。「心」と「技術」の両方が無ければダメなのです。

谷口コーチ

朴さん、私の著書『ザ・コーチ』を読んでみて、感想をお聞かせください。

朴コーチ

読みながら、コーチングプログラムや目標を与えてもらい、初心に帰ることができました。青年と老人との対話の中で、老人が青年の心を読み、しっかりと傾聴している姿や質問を通して共感している姿が印象的でした。
主人公の星野さん(=青年)がコーチングをしている中で、4つの感情の変化があり(苦・集・滅・道)、それが徐々に明らかなっていきますね。4つの言葉を教えるのが『仏道』です。それがすなわちコーチングのプロセスだと思います。

谷口コーチ

コーチングは、時に概念的だったり、抽象的だったりします。それをわかりやすく具体的にしていかないと皆ができません。体系的に、そして基本的にし、いかにわかりやすくするか。そこに、コーチングのマインドがあると思います。私は、朴さんと同じような考え方をしていると思います。
私は、心や命の使い道を考えています。これまでやりたいことをやってきました。それでも、まだまだやりたいことがあります。今、命を使わないで、どこで使うのか。若い時は、それこそがむしゃらだったけれど、命を上手く使っていなかった気がします。今だからこそ、上手く使えるようになったと思います。
よく、「優しさ≠厳しさ」と思われていますが、それは、優しさという言葉を履き違えていると思います。「優しいこと=厳しいこと」だと思います。いかに厳しくすることができるか。この「厳しいこと」は「妥協せずに相手に高く要求すること」を指します。優しいことと甘やかすことは同義語ではありません。「厳しいこと」は、愛も心も無いように捉えられてしまいますが、私は「妥協しないこと」だと思います。「高い基準を保ち、譲らないこと」であり、「愛を持って、譲らないこと」です。「愛」「優しさ」「厳しさ」という言葉の意味をはっきりと区別することが大切ですね。
プレゼンスが低い人は、人を愛することができません。そして、同じ領域に入ることができません。

朴コーチ

谷口さんのお話を聞いて、こんな図が浮かびました。(朴さん図を書き始める。)
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谷口コーチ

朴さんの図は、よく理解できます。
コーチが左上にいると、クライアントには優しくて、よく傾聴もしているけれど、優し過ぎると、クライアントがコーチに甘えたり、物足りなくなったりして、結果、クライアントの成長にはつながらない。そして、コーチが右下にいると、クライアントにはとても厳しくなりますね。高い水準を求め、クライアントを承認しないかもしれない。
そういう意味で、コーチは、右上を目指すのが良いですね。クライアントに対して、あくまで中庸な立場を取る。右上に辿り着いて、初めて、クライアントは自分を開放できるのです。そこには、コーチの「愛」があります。ちょうど「優しさ」と「厳しさ」の間の「愛」です。
コーチとして上手くいかないのは、きっと、朴さんが示した図の、カウンセラー的な部分かコンサルティング的な部分のどちらかに偏っているからですね。

朴コーチ

そうですね。私が考える「コーチが目指すべき道筋」は、ちょうど図の真ん中にある矢印のように成長していくことです。修行や訓練を継続し、この矢印の通り真のコーチを目指すのです。

士野コーチ

お二人ともありがとうございます。
最後に、谷口コーチ、今日の朴さんとの座談会をどう思われましたか?率直にお聞かせください。

谷口コーチ

表面的なものではなく、朴さんと共感しています。同じ匂いがします。久々に私と同感覚な方だと思いました。今日のこの対談は「貴重×100倍」です(笑)。
苦しいことがあると、その先に何があるのか不安になります。なので、多くの人は先を見ようとはしません。そんな人に先を見ることはできません。是非、先を見るようになりたいですね。
この『ザ・コーチ』は韓国で出版されます。是非、皆で韓国に行きましょう。

まとめ(士野コーチ)

まずは、この日韓を代表するコーチの歴史的対談に主催者として関わることができましたことを心より光栄に思います。
お忙しい中、参加してくださった、朴、谷口コーチ、大坪コーチ、他TCI(東京コーチング情報局)の皆様、ありがとうございました。とても有意義で、勉強になる機会となりました。
今回は、『ザ・コーチ』の韓国出版という機会でしたが、アジアから世界へと、一つの道が開けたような気がします。今後は、日韓を定期的に往来しながら、セミナーなどの交流会を重ね、アジアに、世界に、コーチングを普及していきたいと思います。
「コーチングに国境なし」、それこそ世界人類が平和で豊かに人生を歩むためにもコーチングは必要であり、私達コーチの責務は重いと感じています。

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